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愛大 九条の会 設立呼びかけ

 愛知大学教職員の皆さま、憲法9条の改定に向けた動きがついに現実化し始めてきました。2005年5月には国会の憲法調査会で最終報告書が出され、 2006年中には改憲に必要な国民投票法案が国会に提出される運びと言われています。また昨年来の在日米軍再編協議では、日本はますます アメリカの前線基地化しつつあります。

 そもそも戦争や軍事行動はどのような“正義”を掲げて行なっても、傷つき泣くのは常に名もなき弱き市民と 兵士ばかりで、それらを欲する権力者たちは常に安全なところで命令を下すだけです。日本はこの悲しい現実を未曾有の惨状を以て悟ったから こそ、戦後は「旧来の軍国主義的、侵略主義的等の諸傾向を一擲イッテキ〔一掃〕し」「文化、道義、平和の新国家」(愛大設立趣意書 1946年11月15日)として再スタートすべく、憲法9条で戦争と武力行使を禁止し、戦力を保持せず、交戦権も否認したのでした。この意味は今なお決し て小さくなく、愛大はこの憲法の精神と共に誕生したと言っても過言ではありません。今、平和主義が大きな曲がり角を迎えていることは、す なわち愛大の建学の精神もまた危機に瀕している、と言わざるを得ません。

 かつては「人権」も「民主主義」も、王政や有産階級を脅かす反体制的な危険思想でした。ほんの60年前の 日本ではおよそ“大日本帝国臣民”にあるまじき危険思想でしかありませんでした。しかし今どうでしょうか? 人権も民主主義も確固とした 世界的な価値理念にまでなりました。この事実を私たちは重く受けとめたいと思います。

 では、「平和主義」はどうでしょうか。つい80年前(1928年のパリ不戦条約)までは侵略戦争禁止の国 際的約束など不可能と考えられ、ほんの60年前の日本では軍国主義の下、戦争放棄などは全く考えられもしない代物でした。しかし今どうで しょうか? 戦後多くの立憲主義憲法では「侵略戦争禁止」「文民統制」等が規定され、戦争や軍事力に対する拘束は当たり前になってきまし た。日本の「九条の平和主義」は、そういった世界史的な大きな流れを確実に継承し、しかし更に徹底して「戦争放棄・戦力不保持・平和的生 存権」までをワンセットで規定し、世界の国々よりも一歩先んじた内容の平和主義を高々と憲法に掲げたのでした。この方向はおそらく、近い 将来必ずや世界共通の価値理念になっているに違いありませんし、またそうしなければなりません。

戦争や軍事行動は国家権力の発動なしにはあり得ません。9条はまさにそれを世界に先駆けて禁止し、日本全体を戦争の影から遠ざけ、アジアの安定を導き、そ して私たち日本に対する世界の信頼と安心を醸成させてきました。この姿勢は今やアジアのみならず国際的に広く支持されており、憲法9条こ そは最大の「国際貢献」をしてきた功労者にほかなりません。もしその9条を今後変質させ、海外で戦争や軍事行動ができるような内容に変え てしまうならば、未来にわたって大きな悔いを残すことになるでしょう。今こそ憲法を遵守し、9条が目指す普遍的な平和の価値を全ての愛大 の方々と共有してゆくために、私たちは「愛大 九条の会」の設立をここに呼びかけます。

愛知大学有志
2006年1月23日