第9条についての1つの考え、2007年5月3日の憲法記念日に

チャック・オーバビー
(第9条の会1991年創設者)

第9条を愛する日本の友人の皆さんへ:

あなたの国の、美しい第9条の知恵が施行されて60周年のこの日、この手紙を書くにあたり、私はとても残念で、悲しくて、そして本当に腹が立っています。それは、あなたの国の長崎市の市長、素晴らしい、平和を愛した、伊藤一長市長が暗殺されたことを知ったからです。何と愚かな惨事でしょう。ほぼ同じ時刻にアメリカで起きた、32名の学生と教員がブラックスバーグのバージニア工科大学キャンパスで殺害されるという、これも同じく愚かな(senseless)惨事−にどこか似ています。

 市長は核のない地球を作るために大変尽力されていましたから、最初に伊藤市長の死のニュースを聞いた時、私はおそらく過激な右翼の仕業だろうと思いました。核拡散防止条約(NPT)の第6条の履行にまったく背を向けていることに対して、市長がアメリカを批判されていたことを私は知っています。この卑劣な行為は、ある1人の、心に不満を持った、頭の狂った、馬鹿な日本の暴力団員によってなされた様ですが、それはなんとばかばかしい話でしょう。悲しいことですが、時にそのようなことが起きるのも、逆説を好む人の世の現実でしょうか。

 皆さん、バージニア工科大学での殺人は、アメリカ合衆国憲法の修正第二条と複雑に関連しています。修正第二条は以下のように述べています。

「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。」

 この修正第二条がのべている「民兵(a Militia)」は「国民軍という集団(a group)」を指す言葉であるのに、アメリカでは大変力のあるロビー団体の、全米ライフル協会(NRA)が、どんな個人でも、あらゆる種類の武器を、自由に無制限に、いくつでも欲しいだけ手に入れることが出来ることを保障するために利用しているものです。かくして全米、あそこにも拳銃、ここにも拳銃、そこにも、かしこにも、至る所に銃があり、我々を地球上で最も暴力的な傾向の国にしています。

 あなたの国の美しい第9条に捧げる言葉を準備しながら、私は、アメリカに住む我々にとって、第9条をお手本にした、合衆国憲法の新しい修正条項が絶対に必要だという強い思いを新たにしています。第9条は、人間が人間である以上避けられない紛争というものに我々が対処する手立てとして、戦争や暴力を防止すると共に、紛争を非軍事的、非暴力的に解決する方法が用いられなければならないと述べています。軍事的に解決できない世界の問題に、アメリカが傲慢な先制攻撃の軍事的反応をするのは、上に書いたようなアメリカの暴力性癖と複雑につながっています。アメリカで、私を含めた何人かが、ゆっくりですが、我々の合衆国憲法のために第9条の種類の修正に取り組んでいます。おそらく近いうちに、この事についてはもっとお話できるでしょう。

 私は又、皆さんの国の安倍総理大臣の第9条を葬りたいという願い−改憲のための彼の提案−国民投票法案−の行方がどうなるのか、結果を待たずにこれを書いています。皆さんがこれを阻止されますように願っています。

 この手紙は、新憲法施行60周年の2007年5月3日に、日本の友人の皆さんへ希望を伝えるメッセージでした。私はメッセージを、日本の皆さんの課題、そしてアメリカの私達の課題、を述べて締めくくります。

あなたの国の憲法の戦争放棄の第9条(法の支配)を、私は、この地球上の殆ど全ての人類からの情熱的な声 − 戦争という名のもっぱら男のわいせつを終わらせることを求める熱烈な声であると、理解しています。第9条は、ただ単に日本の宝ではありません。第9条は全人類のものです。私は、第9条の知恵が、あらゆる国の憲法の一部になることを待ち焦がれています。そうなれば、種としての我々は、長年の忌まわしい「戦争の支配」によってではなく「法の支配」の下に、お互いの差異を解決し、紛争を処理するようになるでしょう。

 残念なことに、今現在は、『法の支配』よりむしろ『戦争の支配』への強い欲望を見せている指導者に、日本の皆さんそしてアメリカの我々は苦しんでいます。私は、ブッシュ大統領と、日本の新しい総理安倍首相を「経験として戦争を知らない」人たちであるとみなしています。二人とも、戦争の恐ろしい本質に関しては、ほんの僅かな認識すらも(個人的な理解として)持っていません。現ブッシュ大統領は、父ブッシュの権力に助けられ、ベトナム戦争の徴兵を忌避しました。第二次世界大戦と朝鮮戦争の退役軍人である私も含め何百万人の同胞はブッシュ大統領を「臆病者のタカ派(チキン・ホーク)−−他人がやるので戦争を愛するが自分がやるのは嫌だという人」と呼んでいます。日本の安倍総理は第二次世界大戦の終了後に生まれました。ですから、国が、大都市の全てが焦土と化す−その中の二つは核の雲の中で水蒸気になりましたが、その意味を彼個人は全く理解していないのです。

 かくして私達の国の指導者達は、どちらも同じ病気に苦しんでいるようです。どんな病気かと言えばそれは、『軍事力が問題解決の1つの方法であるというイデオロギー的な1つの信条(faith)』という病気です。種としての我々が直面している様々な問題−−例えば核の拡散、それから、浪費とも言える資源消費(1つをあげれば例えば石油)、更に、地球温暖化、市民の薬物中毒の問題、などなど、−−残念ながら、これらに軍事的な解決方法などはありません。しかしこういった問題の根本の原因が探求されることは滅多にありませんし、イデオロギーや信条(faith)ではなく、理性(reason)を用いて、人を、付随的損害として扱うのでなく、尊厳をもって扱うような有意義な解決を見出すということも殆どありません。

 第9条を愛する親愛なる日本の皆さん、私は「希望」から書き始めました。そして、最高の「課題」を、皆さんに残して締めくくります。この恐ろしい時代に、あなたの課題は、非暴力の方法を見つけ、あなたとそして私の国の両政府に、あなたの国の素晴らしい戦争放棄の第9条を葬らせないことです。

アメリカに住む私達は、私たち自身の最高の課題に直面しています。私達は非暴力の方法で、この地球上で単独行動主義の、軍国主義的、ネオコンの、傲慢な振る舞いをとっているわが国政府の軌道を修正しなければなりません。創造性を持って非暴力で思慮深く協力的な相互作用を地球全体で行うものへと変えていかねばなりません。世界中で行われるアメリカの戦争に自衛隊を自由に使う、そのために第9条を破壊せよと、アメリカ政府は日本に圧力をかけていますが、この圧力は、我々の時代の、最も悲劇的な忌まわしいことの1つです。

平和を願って

チャック・オーバビー
第9条の会1991年創設者
2007年4月21日
(訳 たかだ洋子)